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第122回国際研修

平成14年(2002年)9月2日から同年10月25日

1 研修の主要課題

第122回国際研修は,「人の密輸及び不法移民の問題に取り組むための効果的な刑事司法の運営」を主要課題として行われました。

人の密輸及び不法移民の状況は,近時ますます深刻となってきております。

かかる状況に関しては,様々な要因が挙げられ,例えば,貧困,経済格差並びに紛争,内戦,テロリズム,政治的迫害及び干ばつ等の自然災害によって引き起こされた国情の不安定等があります。そして,交通,情報及び商取引におけるグローバリゼーションが人の密輸や不法移民を世界中に広げています。さらに,国際犯罪組織が人の密輸及び不法移民に深く関与し,莫大な利益を上げていることも重要です。

人の密輸及び不法移民は,目的国の入国管理政策を阻害するだけでなく,対象となった人間の基本的人権を脅威にさらすことになります。殊に人の密輸は搾取的な性格が顕著であり,しばしば現代的な形態の強制労働,しかも最も悪質な強制売春を伴うことがあります。

上記のような重大な状況を踏まえて,国際社会は,近年かかる問題に対抗する方策を講じてきました。1999年には,国連国際犯罪防止センター(CICP)及び国連地域間犯罪司法研究所(UNICRI)が共同で,「人の密輸対策世界計画」を策定しました。

2000年11月には,国連総会が,「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下「国際組織犯罪防止条約」という。)」を採択するに至りました。同条約は,3つの議定書により補足されており,そのうち2つである「人,特に女性及び児童の密輸に関する議定書」及び「陸路,空路及び海路による不法移民に関する議定書」は同条約と同日に採択されました。同条約は,2000年12月にイタリアのパレルモで開催された署名会議において120か国以上の国が署名し,さらに,2002年12月12日までアメリカ合衆国のニューヨークにおいて署名のために開放されることになっております。

上記のような国際文書やその他の国際フォーラムにおいて指摘されているとおり,人の密輸及び不法移民の問題は,複雑かつ多面的であります。各国及び国際社会は,これらの問題に対して,その根本原因を緩和すること,人の密輸や不法移民の対象となることの危険性の認識を人々に喚起をすること,効果的な出入国管理及び刑事司法を実施すること等によって取り組んでいかなければなりません。出身国,経由国及び目的国の間における国際協力の促進も不可欠です。

人の密輸及び不法移民,とりわけ国際犯罪組織によって行われるものに対して取り組むための刑事司法制度における効果的な方策については,国際組織犯罪防止条約において示唆されており,例えば,電子的又はその他の形での監視(Electronic Surveillance),刑事免責(Immunity)及び証人保護プログラム(Witness Protection Programmes)等があります。人の密輸及び不法移民の被害者は,出入国管理法違反となり得ますが,適切に保護し,支援される必要があります。なぜなら,人の密輸及び不法移民は搾取的性格を有するばかりでなく,その被害者の協力は,人の密輸及び不法移民を敢行する犯罪者を処罰するために不可欠だからです。

国連の犯罪防止及び犯罪者処遇に関する地域研修所である当研修所は,「国際組織犯罪対策」という総合的なテーマの下で一連の国際研修及び国際セミナーを開催してきましたが,本研修は,当研修所のこの国際的に重要なテーマに対する継続的な貢献の一環として,特に人の密輸及び不法移民に関する2つの議定書に焦点を当てて実施することとなりました。

以上の趣旨を踏まえ,本研修は,人の密輸及び不法移民の現状の分析,人の密輸及び不法移民の事犯を行った者を捜査・訴追・処罰する際の問題点及びその解決策の探求,人の密輸及び不法移民の問題に取り組むための効果的な方策を探究することを目的とし,特に,国際組織犯罪防止条約を補足する上記2つの議定書の採択を受けて,その効果的な実施に焦点を当て実施されました。世界各国に共通する諸問題に対し,他の国々がどのように取り組んでいるかについての実務的な情報や経験を交換しこれを共有することは,人の密輸及び不法移民の問題に対する我々の努力の一層の促進に資するものであると考えられます。

本研修における議論の焦点は,次のとおりです。

(1)人の密輸及び不法移民の現状の概観

  • (a)人の密輸及び不法移民の手口及び経路
  • (b)人の密輸及び不法移民の対象者が搾取される形態

(2)人の密輸及び不法移民の原因の分析

(3)人の密輸及び不法移民の問題に対する取組を構成する諸機関及び法的枠組み並びにそれらの最善の実務

  • (a)出入国管理及び旅券等の文書
  • (b)法執行機関
  • (c)訴追機関
  • (d)裁判所
  • (e)立法問題(人の密輸及び不法移民の犯罪化など)
  • (f)国際協力

2 客員専門家による講義の概要(講義日程順・肩書きは講義当時のもの)

  • (1)ファルーク・アザム氏( Mr. Farooq Azam )
    パキスタン 国際移住機関バンコク地域事務所代表/地域代表
    *講義テーマ
    「人の密輸及び不法移民という国際的問題」
  • (2)ナタリア・オルス氏( Ms. Natalia Ollus )
    フィンランド 国連欧州犯罪防止研修所上席プログラム・オフィサー
    *講義テーマ
    「人,特に女性及び児童の取引を防止し,抑止し及び処罰するための国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する議定書」
    「陸路,海路及び空路による移住者の密輸の防止に関する国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する議定書」
  • (3)ハミッシュ・マカロク氏( Mr. Hamish McCulloch )
    連合王国 国際刑事警察機構人の密輸担当次長
    *講義テーマ
    「人の密輸及び不法移民の問題に取り組むための効果的な刑事司法の運営」
    「人の密輸及び不法移民に対する犯罪組織の関与」
  • (4)リチャード・ホフマン氏( Mr. Richard Hoffman )
    アメリカ合衆国 ボストン連邦検事
    *講義テーマ
    「アメリカ合衆国における人の密輸及び不法移民の現状」
    「人の密輸及び不法移民に対する効果的な対抗策」
  • (5)ディーパ・メタ氏( Dr. Deepa Mehta )
    インド 警視長 デリー都市鉄道会社警備部長
    *講義テーマ
    「インドにおける人の密輸及び不法移民の問題に取り組むための効果的な刑事司法の運営」
  • (6)セベリーノ・ガーニャ氏( Mr. Severino H. Gana Jr. )
    フィリピン 司法省検察局次長検事
    *講義テーマ
    「人の密輸及び不法移民に対抗するための国際協力」
  • (7)ディエゴ・ロゼロ氏( Mr. Diego Rosero )
    エクアドル 国連難民高等弁務官事務所首席法務官
    *講義テーマ
    「強制的移住と難民の権利」

3 特別講師(講義日程順・肩書きは当時のもの)

  • (1)東川憲治氏( 警察庁長官官房国際部国際第一課国際協力推進官 )
    *講義テーマ
    「日本の警察制度」
  • (2)伊丹俊彦氏( 法務省入国管理局総務課長 )
    *講義テーマ
    「入管行政の現状と課題」
  • (3)北村道夫氏( 東京地方検察庁公安部長 )
    *講義テーマ
    「我が国における外国人をめぐる犯罪」
  • (4)森田靖郎氏( ノンフィクション作家 )
    *講義テーマ
    「人間密輸の実態報告−ヒトは蛇頭,カネは地下銀行が運ぶ−」
  • (5)横田洋三氏( 中央大学教授 )
    *講義テーマ
    「人権の観点からみた人の密輸及び不法移民」
  • (6)堀内 尚氏( 警察庁長官官房暴力団対策第二課企画・国際担当補佐 )
    *講義テーマ
    「暴力団について ―暴力団対策法の10年―」
  • (7)山田章一郎氏( 財団法人大阪国際交流センター常務理事 )
    *講義テーマ
    「大阪の昔と今」
  • (8)細井洋子氏( 東洋大学教授 )
    *講義テーマ
    「婦女子の性的搾取及び密輸に関する政策,実践及び重大局面 ―被害者の視点―」
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